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転職ばかりしている自分が、いちばん嫌いだった。

目次

登場人物

  • 名前(仮名):藤村 悠(ふじむら ゆう)
  • 年齢:31歳
  • 性別:男性
  • 住まい:神奈川県川崎市・家賃5.8万円の1Kアパート
  • 職業:IT系スタートアップ勤務(5社目)
  • 現状の悩み:転職を繰り返し、「何者にもなれていない」という自己否定感

物語

1.最初の違和感

「仕事って、こんなもんだろ?」
新卒で入ったSIerの先輩が、よく口にしていた言葉だ。
営業職として配属されてから、毎日数字と睨めっこして、目の前の顧客に媚を売る日々。

最初はそれなりに頑張った。
でも、心がついてこなかった。

「このまま10年続けたら、俺、何になってるんだろう」
そんなふうに考えるようになって、2年目の夏、転職サイトに登録した。

2.「辞めグセ」と呼ばれて

気づけば、もう5社目だった。
営業、カスタマーサポート、広報、マーケ、そして今はカスタマーサクセス。

転職するたびに、最初の1ヶ月は期待される。
「経験が豊富なんですね」「即戦力として期待しています」

でも半年も経てば、「また辞めるんじゃないか」という目で見られる。

友人に相談したとき、「それって辞めグセじゃない?」と笑われた。

言い返せなかった。
たぶん、自分でもうすうす感じていたから。

3.履歴書と、向き合えない夜

転職活動をしていて、いちばんつらいのは、履歴書に向き合う瞬間だった。

空欄になった「志望動機」や「自己PR」欄を埋めながら、自分に問いかける。

「俺、何ができるんだっけ?」
「この5社で、何かひとつ、残せたことってあるのかな?」

どこにも胸を張れる実績がなかった。
名前を出せば通じる企業もない。
資格も、リーダー経験も、何もない。

“いろいろ経験してきました”という言葉が、ただの言い訳に聞こえてくる。

4.飲み会で笑えなくなった日

昔の同期が誘ってくれた飲み会。
久しぶりに顔を出すと、みんな「係長」だの「マネージャー」だのと名刺を出してきた。

「お前も、なんだかんだ出世してんだろ?」
そう言われた瞬間、冗談でも笑えなかった。

名刺入れから取り出すのをやめて、「いま、フリーでちょっとやってて」と濁した。

本当は転職して3ヶ月。
肩書きは「正社員」だけど、会社の中では“まだ様子見”扱い。

何も言えなかった。

5.母の言葉に、言い返せなかった

実家の母から、「あんた、今度は長く続けるんでしょ?」と電話で言われた。

その声が、やけに優しくて。
でも、その優しさが逆につらくて。

「うん、今度は大丈夫」と、嘘をついた。

そう言いながら、また転職サイトを開いていた自分がいた。

6.「何者でもない」自分

自己啓発書を読み漁ってみたり、副業に手を出してみたり。
資格取得のスクールに通ってみたり、noteを書いてみたり。

でもどれも続かなかった。
1ヶ月続けばいい方で、大抵は「やっぱ違うな」と言って、やめた。

「違う」のは環境じゃなくて、自分なのかもしれない。

だけど、それを認めたら、いよいよ自分の芯がなくなる気がして。

7.じゃあ、どうしたいんだ?

あるとき、面接官に言われた言葉が、今でも頭から離れない。

「あなたは、どうなりたいんですか?」

あの瞬間、何も答えられなかった。

「働きやすい職場で、人間関係が良くて、成長できて……」
そんな漠然とした願いしか浮かばなかった。

本当は、“自分が何者になりたいのか”なんて、考えたこともなかった。

8.名前のない時間が、人生を埋めていく

仕事に夢中になったことはある。
でも、それは一瞬だった。

熱量のある上司についていったこともあった。
だけど、半年後にはその人がいなくなって、組織が変わって、空気が変わった。

気づけばまた、「ここじゃない」と思って、退職を決めていた。

気まぐれだと、言われた。
根気がないと、言われた。
でも、そのときどきの判断は、自分なりに「本気」だったつもりだ。

9.それでも、働く

5社目の今。
「今度こそ」と思って入社したが、すでに心が揺れている。

業務内容に不満はない。
だけど、職場の人間関係に馴染めない。

Slackの雑談チャンネルにも入っていない。
昼休みは1人で外に出る。
「社内イベントの参加、どうしますか?」と聞かれたが、「予定があって」と断った。

どこかで、また壁を作ってしまっている。

一言まとめ(人生の問い)

何度も辞めて、何度も始めて、それでも私はまだ、自分を諦めきれない。
あなたが「続けたい」と思えるものは、何ですか?

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