tanaka– Author –
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期待されるのが、昔はうれしかった
期待されるのが、昔はうれしかった。目をかけてもらえることが誇らしくて、自分には価値があるんだって、勝手に思ってた。小さな役割を与えられるたびに、「ちゃんとやらなきゃ」って少し背伸びして、その緊張感さえも、なぜか心地よかった。 でも、今は違... -
誰にも見られていないのに、着替える
今日は誰にも会わない。連絡の予定もないし、SNSの通知も朝から一度も鳴っていない。カーテン越しの光が部屋にじわじわと入り込んで、時計の針はゆっくり午後を指し始めている。買い物は昨日の夜に済ませた。食べるものも飲み物もある。だから、出かける理... -
日曜の朝は、何かを失ったあとみたいに静かだ
日曜の朝は、空気がやけに澄んでいる気がする。車の音も、隣の部屋の生活音も、すべてが少しだけ遠くで鳴っているような。まるで世界が、ぼくの存在をそっと避けて動いているみたいだ。 平日の朝は、たとえ無職でも、どこかに「時間の流れ」を感じる。外に... -
眠れない夜に落ちていた言葉
時計の針は進むのに、心は昨日のまま動かない。 SNSは賑やかすぎて、誰の声も届かない。 静かに息をするだけの夜が、今日はやけに長い。 誰かの『おやすみ』が、ひどく羨ましく感じる。 孤独って、こんなにも騒がしいものだったんだな。 -
コンビニのレジ越しに見た社会
部屋の中にいると、社会がどこか遠い場所のように思える。朝の通勤ラッシュを見ない。昼の会議にも関わらない。夕方の定時上がりの時間には、たいてい布団の中でスマホをいじっている。時間が溶けていく。カーテンを通した光の角度が変わるたび、誰かの1日... -
土曜日の音がしない部屋で
週末の静寂は、平日よりも深い 土曜の昼間、カーテンは開けていない。外が明るいことは分かる。でも、光を入れる気にはならなかった。薄暗い部屋に、スマホの光だけが浮かんでいる。 平日も誰とも会わないけど、週末の孤独は質が違う。「本当は誰かと過ご... -
LINEの未読が3日経ったまま
送る前から、返事が来ない気がしていた。予感って、意外と当たる。わかっていたのに、確認してしまう癖が抜けない。 -
月曜日がただの平日になって
「今日からまた1週間」とか、言わなくなった。曜日の区別が曖昧になるほど、焦りは減っていく。かわりに、何かが擦り減っていく。 -
誰かが読むわけじゃないのに
ことばを残す。声を出せないから、指先でしか表現できないものがある。消さなかったのは、自分のため。 -
今日も、会話はコンビニのレジだけ
外に出た理由は、牛乳が切れたから。「いらっしゃいませ」と「ありがとうございました」のあいだに、今日の“人との接点”はすべて含まれている。それでも、静かに日が暮れていく。
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